ずっと私の歩んできたこと、及び現在も関わっている事業からしても、この1年くらいずっと話題となっている5Gに関しては、私も大いに関心を持っています。実際、私自身も1990年代はPHSの開発が中心でしたが、その横では、携帯電話において2Gの開発をしているのを見ていますし、その後の3G、4Gも然りです。当然5Gは今までの4Gよりもさらに高速伝送が可能で、さらには今までに無い特長として、低遅延、大容量といったキーワードも上がっています。

しかし、私が非常に気になっていることがあります。5Gが全国的にサービスエリアは広がっていくとは思いますが、本当にどこでも5Gが使えるかどうかが大きな鍵になると思います。というのは、過去の無線通信サービスを振り返ると、サービス立ち上げ時に使えない場所があるということで残念ながら評判を落としたサービスが2つあるのです。

それが、1995年のPHSと、2000年代後半のWi-MAXです。これらのサービス立ち上げの時と今回の5Gで非常に似ていることがあるので、心配しています。その内容についてこれから説明したいと思います。PHSの事例および、Wi-MAXの事例についてこれから振り返ってみたいと思います。

1)PHSサービスインのときの問題を振り返る

PHSは、1995年7月に公衆サービスが開始されました。当時3つの事業者がPHSをサービスする事業者として認められていました。1つめはNTTパーソナル、2つめはDDIポケット、3つめはASTEL。NTTパーソナルはNTTの子会社、DDIポケットはDDIの子会社、ASTELだけは通信事業者の子会社ということでは無く、JRとか三井物産とか三菱商事などが出資して出来た会社でした。確か1995年7月の時点では、NTTパーソナルと、DDIポケットがサービスを開始し、ASTELは10月くらいからサービス開始だったと思います。

私自身も別の記事で書きましたが、当時はまずNTTパーソナルに納入しようとしていたパルディオ01Pの出荷前フォローに追われ、何とかぎりぎりでハンドオーバーの問題も分かった上で、サービスに間に合うようにNTTパーソナルにも端末を出荷しました。そして7月1日に予定通りサービスが始まったのですが、しばらくして様々なクレームがエンドユーザから来るようになりました。メインのクレームは、通話しても切れてしまう。通話できないところがある。着信がかからない。などでした。その理由は明確でした。PHSの基地局の数が十分でなかったのです。PHSの場合は、普通の携帯電話と比べて電波が弱いので、1つの基地から電波が端末に届く範囲が半径約100mくらいと言われていました。そのような基地局の円が沢山オーバーラップしていれば、通話中に移動したときもハンドオーバーということで基地局を移り渡ることによって通話が維持できるはずでしたが、実際には基地局の円と円の間に沢山隙間がありました。そういう隙間だとハンドオーバーできず、いわゆる基地局圏外になって通話中切れてしまったり、通話していない待ち受け中も基地局のアンテナマークが立たずに圏外になってしまうということが多く起きたのです。

これは完全に失敗でした。そして、PHSは元々簡易型携帯電話というような言い方をしていて、携帯電話もどきで使えるというように思われていたため、当然どこでも使える、歩いていても使える、車の中や電車の中でも使えると思われていたのが、車や電車の中だと基地局から基地局に渡り歩こうとしても次の基地局が見つからないうちにどんどん移動してしまうということが起きて通話が切れてしまう、実質車や電車の中では使えませんでした。DDIポケットはNTTパーソナルと異なり500mW基地局というのを確か設置して、一つの基地局から半径500mとか1kmとかカバーできるという宣伝をしていましたが、実際には、基地局と端末の電波の対称性のアンバランスによって、NTTパーソナル同様に通信が切れるといったクレームが続発したと記憶しています。

ということで、PHSはサービスインのときから躓き、使えないサービスのようなイメージが出来て、その後思ったようには契約者が増えず、逆にPHSに不満を持った人が携帯電話の契約に移行して、携帯電話の普及が加速したという皮肉な結果になりました。ある意味、PHSでのクレームによって携帯電話が伸びたということで、PHSは携帯電話事業に貢献したといえるかもしれません。

なおPHSの周波数が1.9GHzということで今までの携帯電話よりも周波数が高く、それゆえに電波が飛ばない、電波が届かない箇所が沢山出来るという問題につながりました。

2)Wi-MAXでPHSと同じような問題を繰り返してしまいました。

2000年代後半にサービスインしたWi-MAXがPHSと殆ど同じ問題を繰り返してしまいました。歴史は繰り返すです。Wi-MAXの場合はデータ通信中心ですが、やはりそれでも繋がらないということは分かりますので、評判を落としたことは事実です。私自身も使っていましたが、電車の中で使えない、家の真ん中で使えないなど、PHSとよく似た状況でした。さらにWi-MAXは2.5GHzとその当時でまた一番高い周波数のサービスだったために電波がさらに届きにくい、届かない場所が沢山出てくるというPHSの問題を繰り返す結果となりました。なお2020年代からのWiMAX2ではこれらの問題がかなり改善されて、現在のWiMAXは繋がるところが多いと思います。

5GはPHS、W-MAXと同じようなことにならないかが心配

5Gについては、PHS、Wi-MAXと同じようにならないか?というのが一番心配な点です。まず、現時点=2020年中ごろに置いては、まだまだ5Gの基地局がすくないです。コロナ問題もあり、基地局設置も多分遅れる傾向にあるでしょう。さらに5Gで使用している周波数帯は3.5GHz帯ですので、今までの携帯電話に比べて電波は飛びにくい、届かない場所が増えるという問題も起きがちです。それを克服するための技術がMIMOやビームフォーミングであるというのは認識していますが、周波数が高くなったことを補填するだけの実証が本当に出来ているのかが一番心配な点です。

ただ、PHSやWi-MAXと異なり5Gは、完全に新たなサービスではなく、4Gの延長線上で行われますので、全くサービスが使えないということは無いと思いますので、大クレームにはならないかもしれませんが、5Gの性能を期待している人に対しては失望感を感じさせるものになる恐れがあるということです。

もちろん基地局が沢山設置されれば品質は向上していくとは思いますが、是非使えないところが無いように基地局の設置には十分な注意を払ってほしいと思うばかりです。